• 第1章
  • 第2章
  • 第3章
  • 第4章
  • 終章

第2章

毒の博物館

蛇

私たちのまわりにある様々な「毒」と、「毒」をもった生物を紹介します。生物の毒(動物·植物·菌類)の目的の多くは明確で、主に「攻めるため」と「身を守るため」です。狩り(捕食)のために使用する「毒」、自分を守るために存在する「毒」、様々な有毒生物の「毒」の働きなどを、拡大模型、剥製などの標本を使って説明します。また、鉱物など無生物に含まれる「自然界の毒」や、人間が作り出した毒にも迫ります。

攻めるための毒・
守るための毒

ここに注目!

圧巻の拡大模型!!

「攻めるための毒」「守るための毒」を圧巻の拡大模型で見てみよう。
ハブは実物の約30倍、オオスズメバチは約40倍、
イラガは約100倍、セイヨウイラクサは約70倍!(実物比)

“毒”をもつ生物に大迫力で迫ります。

  • ハブ

    ハブ

  • オオスズメバチ

    オオスズメバチ

  • イラガの幼虫

    イラガの幼虫

  • セイヨウイラクサ

    セイヨウイラクサ

植物の毒

知ってる!?
日本の3大有毒植物

  • オクトリカブト
    写真:門田裕一

    オクトリカブト

  • ドクウツギ
    写真:小幡和男

    ドクウツギ

  • ドクゼリ
    写真:小幡和男

    ドクゼリ

“毒虫”

人を咬んだり刺したりすることで、皮膚のかゆみやかぶれ、痛みなどを引き起こす生き物を総称して、「毒虫(どくむし)」とよぶことがある。

  • さまざまな毒虫
さまざまな“毒虫”

①ウシアブ ②マメハンミョウ ③アオバアリガタハネカクシ
④トビズムカデ ⑤ヒトスジシマカ
⑥シュルツェマダニ ⑦ネコノミ
⑧キョクトウサソリの一種 ⑨ ヨコヅナサシガメ

有毒爬虫類・両生類

コモドオオトカゲ

唾液に血液凝固阻害(血液毒)や血圧低下を引き起こす成分を含み、水牛のような自分よりも大きな獲物も咬み傷からの失血によって徐々に弱らせて捕食する。

コモドオオトカゲ
©Cezary Stanislawski/Shutterstock.com
ブルーノイシアタマガエル

爬虫類のように、自身が分泌する毒液を相手に注入するタイプの毒をもつカエルは南米産のブルーノイシアタマガエルとドクイシアタマガエルの2種しか知られていない。

ブルーノイシアタマガエル
©2012 Mauro Teixeira Jr

海洋の有毒動物

海洋には様々な有毒動物がみられ、
少なくとも3万種前後の有毒動物が知られている。

ハブクラゲ

クラゲやサンゴ、イソギンチャクなどの刺胞動物は、すべての種が刺胞と呼ばれる毒の注入装置をもっている。

ハブクラゲ
写真:黒潮生物研究所 戸篠 祥
トラフグ

フグに含まれるテトロドトキシンは、摂取するとしびれ、麻痺などの症状が発生し、重度の場合には呼吸困難によって死亡することもある。

トラフグ

菌類の毒

地球上に存在するきのこ(推定で10万種以上いるとされる)のうち、大半は食毒不明!

毒きのこ、いろいろ

痙攣、腹痛・下痢、幻覚症状、細胞破壊…
様々な中毒症状を引き起こす。

  • ドクツルタケ

    ドクツルタケ

  • カエンタケ

    カエンタケ

  • オオワライタケ

    オオワライタケ

アスペルギルス·フラブス

カビはマイコトキシンとよばれる300種類以上の様々な毒を生産する。

アスペルギルス·フラブス

鉱物に由来する毒

無生物の世界にも毒は存在する。鉱物の中に存在する毒はその代表的なものだ。鉱石の中から目的の鉱物を取り出そうとした結果、副産物が水を汚染する例もあるし、毒性のある物質を利用する目的で抽出する場合もある。利用を意図した段階ではわからなくても、後で毒性が判明する場合もある。

毒の原料となる鉱物·硫砒鉄鉱

砒素が万能薬とされた時代もあった。酢酸銅と亜砒酸銅からつくられた緑色顔料(花緑青)は、布の染色、壁紙、建材の塗色などに用いられた。主成分である砒素は、代表的な鉱物由来の毒。
かつては暗殺に用いられたことも…!?

毒の原料となる鉱物·硫砒鉄鉱

人間が作った毒

人間が作り出した毒もある。シラミやマラリアの駆除のために使用されたDDT や、工業的に利用されたPCB、プラスチック製品の焼却などによって生じるダイオキシンなどの物質は、POPs(Persistent Organic Pollutants)と総称される難分解性の物質だ。これらの多くは発がん性を始めとする毒性をもち、自然界では分解されない数mm程度のプラスチックの小さな粒(マイクロプラスチック)に吸着されて生物濃縮(食物連鎖を経て、連鎖の順番では後に位置する高次消費者の生物ほど毒が濃くなり、私たちの口に入る時にはかなりの濃度になること)され、他ならぬ私たちを苦しめる結果となっている。

  • クジラの体内から見つかったマイクロプラスチック。

    クジラの体内から見つかったマイクロプラスチック。